もう一つの黒いMS-10 と S-3

鴻巣児童センターで使われているプラネタリウム投影機は1979年製造のミノルタ(現コニカミノルタ)のMS-10という機種です。この型の投影機は10mクラスのドームでよく使われているポピュラーな機械で、その1号機(1966年製造)が昨年(2021年)、国立科学博物館より重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)に登録されました。
それは山口県の山陽小野田市青年の家に設置され今も現役で活躍しています。
YouTubeにもそれに関する報道の動画がありました。

ところが建物や投影機自体の老朽化で今年度(2022年度) いっぱいで閉館になるそうです。ということなので見られるうちに見に行ってきました。コロナ対応で座席数を絞って、事前申し込み。地元の家族連れとかが多い印象で、遠方からわざわざ訪れたプラネタリウムマニアは私だけだったかもしれません。投影は一部パワーポイントのスライド画像を交えながら基本は手動操作、生解説。

リンク先によれば全58台生産されたそうです。1990年代ころまで長きにわたって作られていて、おなじ「MS-10」と称していてもだいぶ変わってきています。一見してわかるのは色の違い。鴻巣のものは青っぽい色ですが、山陽小野田のものは黒で、見た目の印象がだいぶ違います。

黒いMS-10は奇しくも本州のもう一方の端の青森にもあって、10年以上前にそちらを見学した様子はブログに書きました。青森の方は1969年製造、見た目は大変良く似ています。ミノルタの二球式投影機で黒いのはこの二つ以外に見たことはありません。最近のインフィニウムΣ、コスモリープΣで黒色が復活していますが。

閉館後、製造元のコニカミノルタに引き取られて保存されるそうです。
恒星球用の白熱電球をもう製造していなくて入手できないことも閉館の理由だそうです。リンク先YouTubeの3:35あたりに出てくる電球の形は鴻巣用とは違うようで、鴻巣では電球が入手できないとはは聞いてませんし、よそでもまだMS-10は稼働していますし、なくなっては困ります。
山陽小野田の投影機が引退すると、MS-10としては青森の次に古いのが鴻巣になるようです。(国内においては。海外にあるかどうかは知りません。)

午前中に山陽小野田を見て、午後には隣の宇部市に移動して勤労青少年会館のプラネタリウムを見ました。毎週日曜日公開。夏休み中には平日にも投影するらしいです。

投影機は五藤光学S-3、1967年製。定期的に公開している国産機では最古とのこと。(明石市立天文科学館のツァイス(1960年)はドイツ製、東京海洋大学の五藤M-1(1965年)は学園祭の時のみ一般公開、上記山陽小野田(1966年)は年10回程度の不定期公開) 自動化されていないシンプルな機械。コンピューター化されているとコンピューター部分のほうが早く壊れる傾向があるようです。シンプルなメカだと強いし、ある程度の知識があればユーザー側でいじることができます。


決まったプログラムはなく客に合わせてアドリブで、マニュアル操作、肉声生解説。宇部天文同好会が指定管理者です。近く起きる天文現象やトピックに関する詳しい自作資料が用意されています(ホームページからもダウンロード可)。第一線の学者を呼んで講演会を開いたりなど勢力的な活動をされているようです。最近だとブラックホールの撮影をした本間希樹先生の講演が予定されているそうです。

科学館の中にあるプラネタリウムなら、天文学を専攻して学芸員の資格を持った専門職員を雇うこともできるでしょうが、単体の公立プラネタリウムだと、星やメカに特に詳しいわけでもない人がたまたま配属されることもあると聞きます。それなりに勉強はするが、ようやく慣れてきたころに異動で去って行って、また新しい人が配属されて、を繰り返すことがありがちとも。それよりはむしろ、マニアに任せて彼らの好奇心、探求心を原動力に好きにやってもらうのもありだと思いました。建物も投影機も古いですが、できるだけ続けてもらいたいです。

本州の端の隣り合った地方都市に二大メーカー、ミノルタと五藤の古いプラネタリウムがある偶然。

2021年5月22日 天文教室

今回のテーマは、「月齢10の月をスマートフォンで撮影しよう」。
残念ながら、天候の都合で実際の観測や撮影はできませんでした。
その代わり、5月26日の皆既月食を前に、月食についての詳しいご紹介や、講師が過去に撮影した月の写真などを見ながら、美しくも不思議な月面の様子についてじっくり学びました。
また、ご希望の方々には、天文台に移動いただき、望遠鏡とスマホを使ったコリメート撮影の方法についてご説明しました。

2019年8月31日 プラネタリウムの点検・保守

1979年の設置から40年。
鴻巣市児童センターのプラネタリウムは、当時のミノルタ社のMS-10という機種です。
諸般の事情により、ここ10年余り打ち切られていたメーカによる点検・保守がこのほど、特別に実施されました。

いちばんぼしのメンバーも見学させていただき、保守についてのアドバイスをいただく機会を得ました。

作業を見守るメンバーたち

長年メーカ保守が行われていなかったにも関わらず、「状態は比較的良い」とのことで、関係者一同胸を撫でおろしました。(健康診断で褒められた気分)
また、システムを熟知したメーカエンジニアによる整備の結果、いくつかの不具合も解消されました。
さらに、保守や修理に関するノウハウも伝授いただくことができました。
ありがとうございました!

2018年9月2日,8日プラネ投映と全天周投映テスト(3)

鴻巣児童センターのプラネタリウムは、施設開設当時の昭和54年に稼動開始しました。(当時の名称はおおとり児童館)

以来39年間、沢山の方々に星空の魅力を届けて来ました。

投影機のMS-10は、今なお美しい星空を再現し、心休まるひと時を与えてくれます。

この投影機は、現在・過去・未来の地球上の任意の場所からみえる星空を忠実に再現します。

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投影終了後、解説を担当したYさんと、案内係をしてくれた教育実習生のNさん

そして、このプラネタリウムのドームを使って、今私達が取組んでいるのが、全天周投映システム ※ の構築です。

国立天文台が開発・配布している、4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」という、優れたソフトウエア。

そして、全天に表示出来るように強化したプロジェクター。

これらを組み合わせて、これまで表現出来なかった世界がドームに一杯に広がります。

地球から離れて、惑星や太陽系の様子、天の川銀河の様子、銀河系、銀河団、そして宇宙の大規模構造に至る、最新の天文学により解き明かされた宇宙の姿。

これらをダイナミックに視点を変えながら見ていただくことが出来ます。

この全天周投映システムの調整も、今回で概ね見通しがついてきました。

もう少しで、みなさまにお披露目出来そうです。

投映の様子とあわせていくつか写真を掲載します。

スライドショーには JavaScript が必要です。

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火星に近づいてみる

※ 全天周投映システムの構築には、市民活動支援基金を活用しています。

2018年8月18日 天文教室 「火星」大接近!

天文教室 「火星」大接近!

7月31日に最接近したばかりの火星の他、木星、金星、土星、月などを観測しました。
混乱を避けるために、今回は、完全予約制とさせて頂きました。

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事前解説

火星は、地球の直ぐ外側を回る兄弟星。
それぞれ楕円軌道で太陽を周回する2つの惑星は、2年2ヶ月の周期で近付きます。
その近付いた時の距離は、約6,000万Kmから1億Km程度と大きく変化します。
今回は15年ぶりの大接近で、7月31日には約5,800万Kmに最接近、とても火星が観測しやすい状態です。

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星空観望

スライドショーには JavaScript が必要です。



準備の様子

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いちばんぼしと有志

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茜色に染まる空

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北極点に……

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昨年の9月にいちばんぼしで訪問させていただいた、久喜総合文化会館のプラネタリウム。

楽しみにしていた春休み投映が始まりましたので、さっそく行ってきました。

 

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今回のテーマは、北極!

ドームいっぱいに広がる星空、やわらかく心地よい生解説と幻想的な音楽。

普段は見られない北極の星たちの動き。

鮮やかなオーロラの映像も力強く、迫力があってとても素敵でした。

のんびりと北極の星空を楽しんだ、贅沢な時間になりました。

 

★余談ですが、初日に行った自分はきっといちばんぼしメンバー内でも一番乗りだろうと思っていましたが、どうやら自分よりひとつ早い回に、先輩メンバーが行っていたようです~。

 

府中市郷土の森博物館プラネタリウム訪問 2017年10月9日

この日は、現在の投影機、五藤光学研究所社製のGL-ATの最終日ということで、行ってきました。
まずは一般投影の最後の回「銀河鉄道の夜」を観賞。開始前には館長さんの挨拶あり。リニューアル後の投影機は、五藤の最新鋭・最高級機のケイロン3で、来年5月頃再オープンとのこと。
投影の前半は女性解説員による今夜の星空生解説、後半はKAGAYAスタジオ製作の全天周番組「銀河鉄道の夜」。綺麗な映像でした。

17時からは、事前申し込みの特別企画「プラネタリウム投影機GL-ATのひみつ」
この投影機は20m級の大型ドームに対応する、五藤光学製の二球式(恒星球[後述]が二つある)投影機で、約30年前から使われてきました。GLシリーズとしては日本では他に宇都宮と高崎にあります。(海外にはあるかどうか知りません)

GL-AT全体

まずは日の入りから星空が出るまで一通り投影。
その後、本体を立てて照明を当て、五藤光学の技術者の方が説明をしながらカバーをはずしていきます。

分解開始
スリップリングが見えてきます。

分解後中央部拡大
スリップリングとは
投影機のいろいろな部分が回転し、その先に電球やモーターがついていますが、直接電線でつなぐと回転したときに線がねじれてしまいます。そこで、同心円状の電極にブラシと呼ばれる部品を接触させて電力を供給しています。その部分をスリップリングといいます。古い投影機では、カバーがなくスリップリングむき出しのもののあります。

スリップリングむきだし

既に引退した投影機の展示されているスリップリング。

スリップリング展示

我が鴻巣のミノルタMS-10のスリップリング。

MS-10スリップリング
タコの吸盤のような形のものがたくさんついている二つの大きな球体が恒星球。

恒星球

吸盤のようなもの一個一個が投影ユニットで、星の位置に相当する部分に星の明るさに応じた大きさの穴があいた恒星原盤を強力電球で照らして、レンズでドームスクリーン上に投影します。投影ユニットが全部で32個あり、空全体に星を映しています。それらをいくつかはずして、内蔵されている、地平線下に星が映らないようにするシャッターなどを見せてくれました。写真がないのが残念です。その状態で恒星電球を点灯。

恒星ランプ点灯

まぶしいです。メタルハライドランプと呼ばれる放電系の電球で、紫外線が出ているので直視しない方がよいとのこと。
恒星球の先に突き出しているのが、太陽、月、惑星の投影機が並ぶ「惑星棚」。

惑星棚

地球から見たときの複雑な惑星の動きを歯車の組み合わせで再現しています。月投影機は満ち欠けの機能があり、装置が複雑、大型になります。
こちらが、イベント終了時の姿です。30年間お疲れ様でした。

分解後

この回は、他のプラネタリウムの顔見知りの解説員さんとか、有名プラネタリウム番組の監督さんとか、知り合いのマニアの人とか、話している内容からして関係者と思われる人とか、結構いらっしゃってました。

MS-10との比較
鴻巣のプラネタリウム投影機ミノルタMS-10は府中のとは逆に、中心に近いところに惑星棚が、その先に恒星球がついています。

MS-10全体

このタイプは、ダンベル型とか、最初に作ったメーカー名からツァイス型とか呼ばれます。それに対し府中のはモリソン型と呼ばれます。ちなみにモリソンとは、建設資金を提供した基金の名前で、元は人名なのでしょう。ツァイス型では惑星等の年周運動をさせるための伝達軸が惑星棚全体を貫いていますが、モリソン型では惑星棚が南北に分かれているので、それぞれ別のモーターを使い、電気的に同期させて動かしています。重量のある恒星球が中心に近いモリソン型が力学的には有利といわれています。
日本の二大メーカーでは、ミノルタ(現・コニカミノルタ)がツァイス型を、五藤がモリソン型を採用しています。この前訪問した久喜も五藤製でモリソン型。最近は惑星投影機を本体から分離し、恒星球が一つだけの一球式も増えています。府中の更新後のケイロン3も一球式。

参考文献 伊東昌市著「地上に星空を」裳華房1998年 絶版。アマゾンでは中古本にずいぶん高値がついている。